京都丹後「若冲」の谷口酒造様へ酒づくり体験記

2月上旬に京都丹後地方「若冲」の谷口酒造様へ酒づくりの体験をさせていただくことができました。

酒づくりは、今、2月から3月の寒い時期に行われます。谷口酒造様もまさに酒づくり真っ最中のお忙しいところお邪魔させていただき、その精髄の一端を垣間見ることとなりました。可能な範囲で画像と動画を挟みながらご報告いたします。

なお、この記事は代表の髙見ではなく、スタッフのともよしが執筆しております。

比較的暖かい日が続いた 2/4日に新幹線で京都に到着しました。それでも都心に比べると寒さを感じました。丹後地方はここから高速バスで天橋立方面へ北上します。


京都から丹後へ 途中天橋立近くの海も見ることができました。
天橋立駅よりさらに奥へ進みます。


さらに路線バスに乗って与謝野町へ向かいます。よく晴れていますが、雪が残っています。

 
そして谷口酒造様が酒づくりをされている与謝野町にやってきました。
ひんやりとした空気が清らかで、明らかに都会から遠く離れたところにやって来たんだなという実感がありました。
見渡すと大江山連峰らしき山々が見えます。
この大江山を水源とする地下水が清らかに流れていて、日本酒の命である豊かな水を供給しています。谷口酒造様のお酒はこの地下水からつくられます。

少し谷口酒造様周辺の様子を動画でご覧ください。初日はよく晴れていました。山陰ではこのような日のほうが珍しいようです。

  谷口酒造様は京都府の丹後地方、京都府与謝野町に明治4年(1871年)より酒造を構えられています。代表的な銘柄は純米大吟醸「若冲」です。「若冲」の名前の由来は、江戸時代中期に京都で活躍した絵師、伊藤若冲の水墨画の掛け軸を谷口酒造代表の谷口暢様が所蔵されていることにあります。その龍の水墨画は日本酒「若冲」のパッケージに取り入れられています。この純米大吟醸「若冲」は当ショップ「秘蔵の日本酒」で取り扱わせていただいております。

わたしが到着したときは、酒米の洗米と蒸米が終わったところでした。お酒に使う酒米は炊くのではなく、蒸します。その後の作業としては、米麹をつくることになります。

 蒸米を終えて、米を麹室(こうじむろ)に移しているところ。

 麹室は雑菌の混入を防ぐこともあり、見せていただけないことが多いのですが、今回、谷口酒造様には特別な好意で見せていただくことをお許しいただきました。麹室では、蒸米に麹をかけ、温度管理をし、寝かせます。
室の気温は約30℃ほどに保たれ、麹室の室温と外の室温は大変な差があります。その出入りで体調を崩してしまう人もいるということです。

一方、酒母は熟成されつつあります。
手で仰いで匂いを嗅ぐとかすかに甘いような良い香りがしました。

酒母

 谷口酒造様のお酒で代表的なものは純米大吟醸「若冲」です。
そのほか、純米吟醸、純米酒「丹後王国」などがあります。
地元のスーパーにも「丹後王国」が並んでいました。
酒造の玄関にお酒が陳列されていました。
精魂込めてつくったお酒が美しくパッケージングされているのを見ると感慨深いです。

もともと、谷口酒造様では「芝の井」という銘柄をつくられていました。
酒造の外観にも「芝の井」とあります。もともとは酒米は「山田錦」を使用していましたが、やはり地酒と言うからには、地元のお米を使いたいということで京都の「祝」を使うことにしました。研究を重ね、「丹後王国」そして、「若冲」を生み出しました。

 純米大吟醸「若冲」はイタリアで行われたミラノ酒チャレンジで2019年に金賞受賞、2022年に最高賞のプラチナ賞を受賞し、パッケージはベストデザイン賞を受賞しました。

今回、ほんの数日ではありますが、酒づくりをお手伝いしてみて実感したのは大変な重労働だということです。まず、麹づくりでは、何度も夜中に起きて温度湿度を確認します。重い米を運んだり、タンクを移動したり、道具を用意する必要があります。手に触れるもの、米自体に触れるものは注意深く、何度も殺菌します。そうした作業は丹後地方の最も寒い季節の中で行われます。
酒づくりにおける苦労と繊細さを知ったうえで飲むお酒は格別なものがありました。

神棚に挨拶をして麹室に進みます。

夜中に起きるなどして、米麹の温度を確認します。

 

真剣な作業がつづきます。

酒造好適米「祝」が米麹へと発酵されていきます。
米の状態をなんどもチェックします。米が固まっているものはほぐします。

白い布をかぶせて乾燥を防ぎ、何度も温度をチェックして、また、温度のむらのあるところは、混ぜるなどして、分散させます。

そして、その間も、酒母の発酵は進み、芳醇でフルーティーな香りがタンクに充満するようになりました。

夜は谷口様と奥様、タカミン、ともよしで食卓を囲み、お酒も少しいただきました。その後も作業があるので、いっときの休息です。牡蠣や白菜の漬物、鍋などで土地の料理をいただき、「丹後王国」を現地で楽しむことができたのは、本当にありがたいことでした。

次の日も時間の許す限り、道具の清掃、消毒、水洗いを行いました。
初日の晴天から曇り空となり、雨も降ってきました。非常に寒い日でしたが、一生懸命作業をしていると寒さを忘れるほどでした。

わたしの酒づくり体験はここまでとなります。
これから工程は仕込みへと進み、もろみづくりの工程となります。
米麹と酒母が一体となります。
このお酒は純米大吟醸「若冲」となります。完成は3月の半ば頃ということです。酒は生き物なので、自然の条件によって計画どおりにはいかないことがしばしばで、いつまでに完成という正確な日程はわからないということでした。自分が手伝ったお酒が飲める日が楽しみです。

最終日を前に記念撮影をしました。

谷口酒造 代表 杜氏 谷口暢様には大変お世話になりました。
また、奥様にもおいしい手料理をいただき、大変な時に暖かく迎えていただいたことにこの場をお借りして感謝申し上げます。

来月はこの記事を読んでいる皆様へ「若冲」をお届けすることが可能になるかと思います。どうぞ「若冲」「丹後王国」の新酒を楽しみにお待ちいただければと存じます。

帰りはバスで福知山駅へ向かい、山越えしました。
大江山連峰を望み、名残惜しい丹後を後にしました。

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